夫が無くした結婚指輪とユーミンの曲
今から十数年前のことだろうか、結婚して十年は経っていた頃だと思う。夫が結婚指輪を無くした。夫も私も外出から家に帰ってくると、時計を外すように指輪も外す。おそらく家の中だというが、どうにも見つからない。新婚時代でもなく、息子たちは小学生のやんちゃ盛りで、私も仕方ないね、くらいで流していた。
数ヶ月後、その当時住んでいる家を引越すことになり、準備をしなくてはならなくなった。新聞紙入れにためてあった新聞紙で壊れ物を包んでいたときのこと、新聞紙から、ころん、と何か光ったものが落ちてきた。なんと夫の指輪だった。「あれー指輪あったよ!」と驚きで思わず声がでる。仕方ない、といいながら、やはり出てきたときは嬉しかった。そんなとこにあったのか、と夫も喜んでいた。もしも引越しもしないで、そのまま新聞紙回収に出していたら、と思うと、不思議なモノとの引き寄せの力に驚く。
同時に、私の得意の空想癖が始まって、この指輪がもしも夫のものでもなく、私のものでもない細いサイズの指輪が出てきたとしたら、どうだっただろうか、と空想物語が展開していくのだった。
頭の中に流れてくるのはユーミンの曲。
♪彼のベッドの下に
片方捨てた
真珠のピアス
可愛いあのひとと引越しするとき
気づくでしょう
broken heart
最後のジェラシー
by ユーミン 「真珠のピアス」
ユーミンの曲が頭の中でヘビーローテーションし、空想の世界へと拍車をかけたものだった。こうして改めて思い出すと、物語の続きがまた作れそうである。
夫は今も指輪を出かけるときにはめて、帰宅すると外している。私も同じくだ。そんな夫との結婚生活も28年間続いている。息子たちは独立し、また夫と二人きりの生活だ。もう若くはない50代の夫婦だけど、気持ちは老けこんではいない。たまにはユーミンの歌の世界を想像して、しまいがちな感情を思い起こしたりするのも悪くないかな。ちなみに私は耳にピアスのあなを開けていない。そろそろ開けてみようと思っている。